この記事についてClaude(Anthropic)との共同編集により作成されました。
要約
- 思いついたことを保存先を考えずに放り込むための Android アプリ「chigusa」を作って、Google Play で公開した
- タイトル・フォルダ・タグ・保存先の選択をすべて外した。書いて「植える」を押すだけで、種が堆積していく
- 整理は保存と切り離した。あとから SQLite + FTS5 の全文検索で掘り起こし、畝にまとめ、Markdown で外へ送り出せる
- 通知は作ったが、ストリーク・連続日数・達成率は意図的に作らなかった。無視しても何も起きない
- 紹介ページは /chigusa/。入手は Google Play から
メモアプリを開いて、最初に来るのが「これ、どのフォルダだ」だったことはないでしょうか。 フォルダを選び、タイトルを付け、タグを決めているうちに、書こうとしていたことが薄くなっていく。あれをやめたくて作りました。名前は chigusa(千種)。開いて、書いて、埋めるだけのメモアプリで、Google Play で公開した。
紹介ページに 8 秒の実機録画を置いてあるので、速さの主張はそちらのほうが早い。
作った動機 — 保存先を考えた瞬間に、思いつきは死ぬ
「SNS に書くほどでもないな」と思って消した文章は、どこへ行ったんでしょうか。
たいていのメモアプリは、書く前に分類を要求してくる。分類は本来あとからやればいい作業なのに、保存という行為にくっついているせいで、思いついた瞬間に処理が挟まる。解きたかったのは入力速度ではなく、保存方法を考え始めた瞬間に思考が切れるほうの問題だった。
だから chigusa では、整理の機能を保存から完全に切り離した。整理は掘り返すときでいい、という立場を取っている。「整理させない」ではない点は一応強調しておきたい。畝も検索もエクスポートもある。ただ、それを保存の瞬間に要求しないだけ。
想定している人:
- 思いついたことを、その場で書き留める前に忘れるタイプの人
- メモアプリを開いたはいいがフォルダ選びで止まる人
- 断片を貯めて、あとから文章にする人
埋める対象はアイデアに限らない。不満、違和感、気づき、セリフ、小説の断片、UI 案、怒り。まだ名前がついていないものを、名前をつけないまま置いておく場所として作った。
仕組み — 植える / 掘り起こし / 観察

タブは 3 つだけ。
植えるは入力欄とボタンだけの画面。保存すると入力欄が即クリアされ、フォーカスも残るので、続けて次を打ち込める。下には直近の種が積もっていくが、タップしても編集画面は開かない。埋めたものはひとまず眠らせておく、という感覚を壊したくなかった。
掘り起こしは SQLite の FTS5 を使った全文検索と、時系列一覧、ランダム表示。編集もここ。育てたい種は畝(うね)にまとめられて、畝ごとに Markdown へ書き出せる。既存の .md への追記にも対応した。書き出した種は自動でアーカイブされ、堆積ビューから外れる。
観察は、直近 12 週のヒートマップ、月ごとの推移、種を植えた場所の分布、これまでの合計。
バックエンドはない。アカウントもない。種の本文は端末内の SQLite に閉じていて、外に出るのは自分が共有シートやクリップボードで明示的に送り出したときだけ。React Native(Expo)製。
足さなかった機能 — タイトル・フォルダ・タグ
このアプリでいちばん時間を使ったのは、機能を足さない判断のほうだった。
タイトルを付けさせない。タイトルは内容を要約する行為で、要約は書き終わってからしかできない。書く前に要求すると、まだ形になっていない断片が全部はじかれる。 フォルダを作らせない。フォルダは「この先も同じ種類のものが来る」という予測を要求する。未分化な断片に対しては予測が立たない。 タグを付けさせない。タグは分類の変種で、選択肢が増えるぶんフォルダより迷う。
代わりに全文検索を置いた。検索が効くなら、事前の分類はほとんどの場合いらない。
途中で撤回した判断もある。当初は「Enter で保存、Shift+Enter で改行」にする設計だった。1 タップすら惜しい、と思っていたからだ。実際に自分で使ってみると、ソフトキーボードでは Shift+Enter が打てないし、物理キーボードでも保存後に改行文字が残るレースが起きた。そこで気づいたのは、0 秒というのは打鍵数の話ではなく、保存先を考えさせない話だということ。ボタンを 1 回押すのは思考の妨げにならない。Enter は改行に戻した。
通知も同じ理屈で削った。ランダムな時刻に「最近の違和感は?」と聞く通知と、眠っている種を 1 粒だけ掘り返す通知は入れたが、ストリークも連続日数も達成率も赤いバッジも置いていない。「種を出さなきゃ」と思わせた時点で、0 秒保存の思想と真逆になる。設定画面には「無視しても何も起きません」と書いてある。観察タブに順位も目標もないのも同じ理由で、あれは達成を測る画面ではなく、ただ眺めるための画面として作った。
これまでのアプリとの関係
これまで公開してきた tobari・souten・ema はブラウザで完結する Web アプリで、tanzaku が初のネイティブアプリだった。chigusa はネイティブの 2 本目になる。同じく React Native(Expo)で、SQLite・全文検索・ローカル通知まわりが増えたぶん、tanzaku より中身は厚い。
収益まわりの構成も tanzaku と揃えた。基本は無料で、植える画面と掘り起こし画面の上部に控えめなバナーが出る。リワード動画を見ると翌朝 5 時まで広告が消える(0 時ではなく 5 時なのは、深夜に使い続けても途中で切れないようにするため)。プレミアムは月額 ¥150 で、広告が完全に消える。入力動線そのものには広告を置いていないし、インタースティシャル広告は使っていない。
場所の記録はデフォルト OFF の完全オプトインで、設定と OS の許可が両方揃ったときにだけ、保存時に一度だけ取得する。詳細はプライバシーポリシーに書いた。
おわりに
アイデアの種を、0 秒で土に埋める。
chigusa はそれだけのアプリ。 保存先を選ばされているうちに消えていた思いつきを、名前をつけないまま置いておける場所を用意した、という話でした。
紹介ページは /chigusa/、入手は Google Play から。
不具合や要望は hiranorm.support@gmail.com まで。